歌舞伎俳優の中村橋之助、現在の八代目中村芝翫をめぐる不倫報道は、当時の歌舞伎界に大きな波紋を広げた。報道が出たのは、橋之助が大名跡「中村芝翫」を襲名する直前の時期であり、本人にとっても成駒屋にとっても極めて重要な節目を前にした出来事だった。
2016年9月14日、橋之助は東京都内のホテルで急きょ記者会見を開き、翌15日発売の「週刊文春」で報じられた30代の芸妓との不倫疑惑について説明した。報道では、相手女性は京都・先斗町の芸妓とされ、都内ホテルでの密会が伝えられていた。
会見で橋之助は、相手女性について「初めて会ったのは20年以上前」と説明し、歌舞伎界と京都の花街には長年のつながりがあることにも触れた。また、その女性が妻で女優の三田寛子とも面識があったことを明かしている。
記者から男女関係や不倫関係の有無を問われると、橋之助は具体的な説明を避けながらも、「私の不徳の致すところ」と繰り返した。報じられた女性とホテルの同室に入ったことなどは認めており、関係を完全に否定することはなかった。
そのうえで橋之助は、「少し度が過ぎたと思っている」と反省の言葉を述べ、今後は同じようなことがないようにすると語った。会見では終始、言葉を選びながら謝罪する姿が目立ち、襲名を控えた立場としての責任の重さをにじませた。

妻の三田寛子については、「大変きつく、きつく叱られた」と明かした。三田からは、大きな名跡を継ぐにあたって認識が足りないのではないか、甘い覚悟ではいけないと諭されたという。夫婦関係について問われると、橋之助は「そういうことはないと信じていますが」と語り、離婚危機については明言を避けた。
当時、橋之助は2016年10月2日から東京・歌舞伎座で始まる「芸術祭十月大歌舞伎」で八代目中村芝翫を襲名する予定だった。歌舞伎界の大きな名跡を継ぐ直前の騒動だっただけに、関係者や後援者への影響も大きく、本人だけでなく三田も謝罪対応に追われていると説明していた。
橋之助と三田寛子は、芸能界と梨園を代表する夫婦として長く知られてきた。三田は家庭を支えながら、夫の歌舞伎活動や息子たちの成長を見守ってきた存在でもあり、今回の報道はその家族像にも影を落とすものとなった。
一方で、会見後も橋之助は襲名披露興行に向けて舞台に立つ決意を示した。「芸道に精進し、良い舞台を見せることが自分にできること」と語り、騒動への反省を示しながらも、歌舞伎俳優としての責任を果たす姿勢を強調した。
この不倫報道は、歌舞伎界における伝統や名跡継承の重み、そして芸能人の私生活に対する世間の厳しい視線を改めて浮き彫りにした。襲名という晴れ舞台を前に起きた騒動は、本人だけでなく、家族や成駒屋全体にとっても大きな試練となった。

