サッカー日本代表は、FIFAワールドカップ2026北中米大会の決勝トーナメント1回戦でブラジル代表と対戦し、1-2で敗れた。試合は6月29日、ヒューストンスタジアムで行われ、日本は前半29分に佐野海舟が先制ゴールを決めたものの、後半11分にカゼミロに同点弾を許し、後半アディショナルタイムにはマルティネッリに決勝点を奪われた。日本は強豪ブラジルを相手に粘り強く戦ったが、3大会連続の16強入りはならず、大会を終えることになった。

この一戦について、元日本代表でサッカー解説者の城彰二氏は、文春オンラインのインタビューで試合を振り返った。城氏がまず称賛したのは、先制点を奪った佐野海舟だった。前半29分、佐野は中盤でブラジルの横パスを読んでインターセプトすると、そのまま自らドリブルで前進。最後はペナルティーエリア手前から右足を振り抜き、ゴール左隅へ沈めた。日刊スポーツの試合経過でも、佐野が中盤でパスをカットし、一気に敵陣へ進入して先制点を決めた場面が記録されている。
城氏はこのゴールについて、佐野が奪った後に安易に味方へ預けるのではなく、自分で運んだ判断を高く評価している。伊東純也が相手サイドバックを引きつけた動きも見逃さず、佐野が前方の状況を把握したうえで迷わず仕掛けた点に、個人技術と判断力の高さが表れていたと見た。さらに、前傾姿勢でボールが前へ走る状況の中、シュートをふかさずコースへ流し込んだ精度にも注目し、佐野の技術を称賛した。
しかし、試合の流れは後半に大きく変わった。ブラジルは前半、日本の守備ブロックを崩し切れなかったが、後半に入ると攻撃の形を修正した。城氏は、ブラジルがヴィニシウスを前半よりもワイドに配置したことで、日本の対応が難しくなったと分析している。ヴィニシウスは縦への突破だけでなく、周囲を使うプレーやカットインもできるため、日本の守備は左右に振られ、次第に押し込まれる展開になった。

実際、日本は後半11分に失点する。ブラジルは左から浮き球のパスを入れ、ファーサイドでカゼミロが頭で合わせて同点に追いついた。城氏は、日本のディフェンスラインが深くなり、守備一辺倒になったことで、ブラジルに対角のクロスを入れられる状況を作られてしまったと指摘している。試合を動かすために戦術的な変化を加え、必要な時間帯に得点を奪ったブラジル、そしてアンチェロッティ監督の采配について、城氏は高く評価した。
終盤の決勝点につながる場面では、田中碧のミスも大きな焦点になった。後半アディショナルタイム、日本は長い時間ブラジルに押し込まれ、苦しい状況が続いていた。城氏は、田中がボールを奪ってつなぎ、時間を作ろうとした意図は理解できるとしながらも、結果的にそのプレーが相手ボールとなり、決勝点につながってしまったと振り返った。強豪国との一発勝負では、たった一つの判断ミスや技術的なズレが命取りになる。城氏の言葉は、世界のトップレベルで戦う厳しさを改めて示すものだった。
一方で、城氏が厳しく指摘した“意外な選手”は、堂安律でも、鎌田大地でも、田中碧でもなかった。城氏が名前を挙げたのは冨安健洋だった。文春オンラインのインタビューで城氏は、ブラジルは全体的にミスが少なかった一方、日本は冨安のフィード精度がもうひとつで、パスがつながらず、クリアも苦し紛れになり、すぐ相手ボールになっていたと指摘している。冨安は日本守備陣の中心であり、欧州トップレベルで経験を積んできた選手だからこそ、その評価は意外性を持って受け止められる。
城氏の指摘は、冨安個人を責めるだけのものではない。むしろ、強豪国と互角に渡り合うためには、守備で耐えるだけでなく、奪った後に正確につなぎ、相手の圧力を外す力が必要だという問題提起だった。ブラジルのような相手に対して、クリアが相手に渡り続ければ、再び攻撃を受ける時間が長くなる。結果として守備ラインは下がり、選手の疲労は増し、失点のリスクも高まっていく。城氏が「パスがつながらない」と語った背景には、日本が世界の強豪を倒し切るために避けて通れない課題があった。

選手交代についても、城氏は疑問を示した。堂安律と中村敬斗を下げ、鈴木淳之介と菅原由勢を投入した交代については、サイドの守備負担を考えれば理解できるとした。しかし、後半33分に田中碧と町野修斗が入った場面については、特に町野の投入意図が分かりにくかったと語っている。城氏は、あの時間帯に必要だったのは、守備だけでなく自らドリブルで運び、ルーズボールにも勢いを持って向かえる選手だったのではないかと見ていた。
この敗戦は、日本がブラジルを相手に何もできなかった試合ではない。佐野の先制点、前半の守備ブロック、鈴木彩艶のセーブ、選手たちの粘りは確かにあった。しかし、後半に流れを変えられた時、日本はボールを保持して落ち着かせる時間を作れず、耐える展開に追い込まれた。城氏も、前半には鎌田が間でボールを受けて試合をコントロールする時間があったとしながら、後半は耐えるだけになってしまった点を課題として挙げている。
森保ジャパンはベスト32で大会を去ったが、このブラジル戦は日本代表の現在地をはっきり映し出した試合でもあった。個々の技術、判断、フィードの精度、試合展開を読む力、そしてベンチワーク。どれも小さな差に見えて、世界の強豪相手には大きな結果の差になる。城彰二氏が冨安のフィードに言及したのは、単なるミスの指摘ではなく、日本が次の段階へ進むために必要な“細部の質”を問うものだった。ブラジルに迫りながら、最後に届かなかった90分。その悔しさは、次の日本代表が超えなければならない明確な宿題として残った。

